これまで咀嚼・嚥下時の舌圧を評価するために口蓋床に埋入した圧力センサを使用してきた。今回、面圧分布測定システムを応用したセンサシートと従来の圧力センサとを比較したところ、両者の出力値の間に強い相関関係が認められ、若年健常者30人を対象とした嚥下時舌圧測定においても、圧力センサを用いて測定した場合と同様に正常な舌圧発現パターンが得られたことから、センサシートの有効性が確認された。これによって、これまでの圧力センサのように各被験者に口蓋床を製作するという煩雑な作業を必要とすることなく、簡便に舌圧を測定することが可能となった。また、咽頭期嚥下機能の指標として筋電図、嚥下音、喉頭運動なども同時測定し、検討を行った。 今年度、若年健常者30名、高齢健常者25名について測定を行い、比較を行った。嚥下時の舌圧発現パターンとしては大きな差は認められなかったものの、高齢健常者の水嚥下時の舌圧最大値は若年健常者と比較して、口蓋における側方臼歯部では変わらなかったが、正中部では前方でも後方でも低かった。これによって、嚥下時の舌圧は加齢によって低下することが示唆された。 また、この舌圧センサシートによる舌圧測定と同時に、嚥下関連筋群の筋電図、さらには嚥下音を同時に測定するシステムを確立した。このシステムによって、これまで咀嚼・嚥下時の口腔相における舌運動の評価だけであったが、口腔相から咽頭相にかけての舌と嚥下関連筋群活動との協調した閑係を評価することが可能となった。 来年度は、健常高齢者の嚥下時の舌圧発現様相を明らかにし、ひいては嚥下障害を有する患者の嚥下機能評価を行ううえでの指標を見出すことを目的とし、このシステムを用いて測定を行う予定である。
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