研究概要 |
前年度の報告では、チェアサイドやベッドサイドにおいても簡便に使用でき、嚥下機能を定量的に評価しうる舌圧センサシートシステム(Nitta社)の有効性を示した。今年度もこのシステムを用いて、1では健常高齢者と健常若年者との嚥下時舌圧の比較を行い、高齢者の嚥下動態について検討した。2では嚥下時舌圧に加え,嚥下音ならびに筋活動を同時に測定し,包括的な嚥下機能評価を検討した。 1.被験者は、健常高齢者と健常若年者とし、舌圧センサシートを被験者の硬口蓋部に貼付した。唾液および水15mlの嚥下を測定項目とし、各々の被験者に対して3回ずつ行った。また舌圧の測定部位は、上顎口蓋部正中の前,中,後方と左右後方部の計5点とした。その結果、舌圧最大値については、全体的に高齢者は若年者と比較して低い値を示した。また、若年者では正中前方部に、高齢者では左右後方部に高い値を示す傾向が認められた。また舌圧発現時間については、若年者と比較して高齢者ではすべての部位において延長した。これらの結果は、加齢に伴う嚥下動態の変化を示唆するものと思われた。 2.被験者は若年健常者とし、舌圧に加えて、舌骨上筋群、舌骨下筋群の筋電図と、嚥下音を同時計測した。各々の被験者に対して水15mlの嚥下を3回ずつ行い、嚥下音の検出時を基準(0秒)とした時系列を設定し,舌圧発現時と消失時,ならびに,筋活動開始時と静止時を分析対象とし,嚥下時における,舌圧発現と筋活動と嚥下音の順序について比較を行った。舌圧は正中前方部より左右および正中後方部の順に発現しており、嚥下音の検出の後、硬口蓋全体でほぼ同時に消失していた。また、舌骨上筋群は舌圧発現に先立って活動を開始し、舌圧消失時まで活動を持続しており、舌骨下筋群は最後に活動を静止した。これらの結果より、健常者における水嚥下時の舌圧発現と嚥下関連筋群活動との時系列的な協調性が示された。
|