研究概要 |
本年度は健常有歯顎者4名(男性,24〜31歳)を対象として,空嚥下および10mlの水嚥下をそれぞれ5回ずつ1分間隔にて行った際の喉頭運動の動態ならびに嚥下音に関して検討を加えた.嚥下時における喉頭運動の記録はデジタルビデオカメラにより行い,オーサリングソフトを用いて1フレーム3/100秒ごとに解析し,嚥下に伴う喉頭挙上速度および降下速度を算出した.嚥下時における嚥下音は左側の輪状軟骨直下気管外側上の皮膚に両面テープにて固定した加速度ピックアップによって検出,増幅し,データレコーダーによって記録した.記録した嚥下音の音響信号に対しては高速フーリエ変換により周波数スペクトル解析(窓関数;Hanning)による検討を加えた. 本年度の研究結果より以下の知見が明らかとなった; 1.嚥下時における喉頭運動の動態に関して (1)空嚥下時における喉頭挙上速度(平均24.2mm/sec)と降下速度(平均21.1mm/sec)の間には有意な差が認められなかったが,水嚥下時には喉頭挙上速度(平均17.0mm/sec)は降下速度(平均21.0mm/sec)に比べて有意に小さな値を示した(従属2標本のt検定,p=0.024967). (2)空嚥下時に比べて水嚥下時の喉頭挙上速度は有意に小さな値を示した(従属2標本のt検定,p=0.001108)が,喉頭降下速度は空嚥下時と水嚥下時との間に有意な差を示さなかった. 2.嚥下時における嚥下音の周波数スペクトルに関して 空嚥下時における嚥下音周波数スペクトルは41.4Hzの周波数をピークとする音響信号より構成されており,水嚥下時には57.1Hzをピークとしたスペクトルが観察された.これらのピーク周波数間には有意な差が認められた(独立2標本のt検定,p=0.000332).
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