予備的研究として簡易型舌圧測定装置を用いて嚥下時の舌圧波形を測定し、既存の嚥下評価法との関係を明らかにして、嚥下機能評価としての舌圧波形分析の有用性を検討した。 被験者には、本学附属病院受診患者15名(53-86歳、男性5名、女性11名)および特別養護老人施設に通所する要支援・要介護度1-3の高齢者17名(73-90歳、男性3名、女性14名)の協力を得た。各被験者に反復唾液嚥下テスト(RSST)および水のみテストによる嚥下機能評価を行った後、簡易型舌圧測定装置(ALNIC社製TPS-350)を用いて最大舌圧と水5mlの嚥下舌圧を3回ずつ測定した。嚥下舌圧測定時には被験者にプローブの受圧部(初期内圧:4.9kPa)をくわえたまま水5mlを嚥下するように指示した。嚥下時の舌圧波形の観察・記録は、測定装置からの出力をパーソナルコンピュータに取り込んで行い、圧力の最大値および変曲点(以下ピークとする)の数を求めた。 RSST3回以上の正常群は13名、2回以下の異常群は19名、水のみテストで嚥下時間5秒以下の正常群は16名、5秒より長い異常群は16名であった。最大舌圧(33.0±9.4kPa)と嚥下舌圧(11.9±7.7kPa)の間には有意な相関が認められた(r=0.62)。RSST正常群と異常群の間に嚥下舌圧の差は認められなかったが、水のみテスト正常群に比べて異常群ではピーク数が多く波形に差がみられた(4.3±2.4 vs 8.8±6.7、P<0.05)。以上の結果より、本測定装置を用いた嚥下時舌圧の波形分析が嚥下機能評価の一助となる可能性が示唆された。 予備的研究として上記の様な結果を得たため、現在まで、大規模集団660名(23-99歳、男性207名、女性453名)の嚥下舌圧など必要項目の測定を終了し、より詳細な嚥下舌圧の波形分析を行っている。
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