研究概要 |
インプラントは経時的に咬合感覚が生じて来たとの患者の意見が多く、これは、咬合感覚が経時的に獲得されるためと考えられる。しかし、「インプラントの咬合感覚」やその獲得経緯については殆ど報告されていない。加えて歯牙移植については、利点の一つとして歯根膜の感覚機能が活用できることが挙げられているが、移植のため抜歯することによって神経線維が断裂後、再び歯根膜に神経線維が侵入し、咬合感覚が再生するのか、また咬合の役割については明らかでない。本研究ではこれらを検証するために、インプラントや移植歯牙の骨結合後の咬合負荷による周囲神経分布の変化および応力分布の関連について、組織学的、生体力学的に検討することを目的とする。本研究は、特に以下の点について検討を行った。 <osseointegration獲得後の咬合負荷によるインプラント・移植歯牙周囲神経分布の変化> 昨年度までに移植歯牙歯根膜への神経の侵入が観察されたが、インプラントでは特記すべき現象を認めなかった。本年は免疫染色法を用いてCGRP, FGF receptor, Vanilloiid receptor, NGF-β の分布を検討することによって組織学的なデータを蓄積した。その結果、インプラント周囲にはやはり上記タンパク質を有する神経線維の侵入は認められなかった。 <インプラント周囲の知覚神経分布とインプラント周囲骨内応力分布の関連> 上記の標本をもとに、三次元有限要素モデルを作製し、このモデルより咬合による応力の骨内分布と知覚神経の分布状態の関連について検討した。具体的には、応力値の違いと神経の分布状況を比較することにより、応力と神経の分布の関連について検討した。その結果、インプラント周囲の神経線維と応力分布に相関は認められなかった。
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