[目的]チタンは空気中で容易に酸化し、そのためアレルギーになりにくいと考えられている。しかしチタンインプラントに対し金合金などの電位差の大きい上部構造を装着した場合、異種金属接触によるガルバニック作用が生じ、電位的に卑であるチタンの溶出が多くなる。現時点でチタンはインプラント材料として最も適しており、溶出を抑えるためにも何らかの処理によってチタンに絶縁効果を付与する必要があると考えられる。本実験ではチタンインプラントにさまざまな表面処理を行い、1%乳酸水溶液中で3ケ月間浸漬後の溶出元素量を測定し検討した。 [材料および方法]直径4mmのチタン棒を17mmの長さに切り出し6℃のテーパーを付与したインプラント体を作製した。インプラント体には表面処理を行い酸化膜を付与した。上部構造にはチタン、金合金タイプ4および金銀パラジウム合金をそれぞれ使用し、これらをグラスアイオノマー系レジンセメントにてインプラントに合着し試験片とした。試験片は1%乳酸水溶液50ml中に浸漬し、37℃-毎分100回の条件で3ケ月間浸とうを行った。浸漬後、溶液中に溶出した元素を高周波プラズマ質量分析装置(ICPE-9000、島津)にて定量分析を行った。また浸漬後の試験片をレーザー顕微鏡(OLS-3000、オリンパス)にて観察した。 [結果および考察]上部構造にチタンを用いた場合、Tiの溶出量は未処理、10分そして30分の間に有意差は認められなかった。金合金タイプ4および金銀パラジウム合金の場合、Tiの溶出量は未処理に比較して10分では小さく30分では大きくなり有意差が認められた。実験の結果、比重の大きく異なる異種金属が上部構造の場合、毎分100回の浸とう時に機械的にチタンが削られたことが結果に影響を与えたと推測される。よって実験方法の検討を検討し再実験を行う必要があると示唆された。
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