研究概要 |
顎骨欠損患者は,欠損が広範かつ複合的であること,支持組織の喪失による補綴装置の安定性の欠如,下顎の運動制限や下顎の偏位など,様々な臨床条件を理由に,その咀嚼機能を回復することが容易でないとされる,また,欠損の形状が多岐にわたり,さらに再建の様相も影響するため,現時点では顎義歯の機能評価に関する確固たる指標が得られていない.そこで,欠損部位・範囲,欠損の処置,残存歯などを基準とした顎義歯に関する統合的な咀囑機能評価のパラメータを構築する一環として,咬合力と咀囑能力を測定・調査した. 被験者は上下顎のいずれかに顎骨欠損を有する15名であるが,使用中の顎義歯に満足しており,本研究の主旨に同意が得られた者を対象とした.咬合力測定にはデンタルプレスケール(フジフィルム社製)を用い,最大咬合力にて咬合させた,測定は3回繰り返して行なった.測定項目としては,最大咬合力,咬合接触点数および接触面積としたが,3回の測定の平均を測定値として用いた.また,各測定項目に対して,顎欠損および残存歯の状況を組み込むことで,顎義歯の咬合評価の要素として処理した. 咀囑能力は我々の診療部で作成した独自の顎義歯用摂食アンケートにより評価した. その結果,咀囑能力には顎欠損形態,残存歯,再建の有無よりも咬合力や咬合接触面積および接触点数が関与している傾向が確認され,顎義歯における機能評価法として,統合的なパラメータ構築の必要性が示唆された. 今後,被験者を増やすこと,摂食アンケート調査の測定および解析方法の確立,客観的評価としての咀囑能率測定の導入などが必要と考えているが,顎義歯機能評価の利便的かつ統合的指標の作成を予定している, 尚,この研究成果の一部は,第23回日本顎顔面補綴学会(平成18年6月23・14日,徳島)において発表を行なった.
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