研究概要 |
本研究では,咬合の位置的,力的,時間的因子の計測が可能なT-スキャンIIを用いた咬頭嵌合位における咬合検査の位置的,力的,時間的パラメータの基準範囲の設定と,その臨床における有用性について検討することを目的とした. 本年度は,健常有歯顎者における基準値の設定を目的として,顎口鹿系に白覚的,他覚的に機能異常を認めず口腔内に修復処置の認められない20歳代の健常有歯顎者の50名の測定を行った.測定はT-スキャンIIを用いて行い,被検者に随意的にできるだけ速く咬頭廠合位における最大咬みしめを行わせ,その後1秒間最大咬みしめを羅持させた際の時系列の咬合接触の変化を記録・保存した. 咬合の同時性の指標となるオクルージョンタイム(センサシートをできるだけ強く咬ませた際の第1咬合接触点から最大咬頭嵌合の90%の咬合力を発揮した時点までの経過時間.以下,OTとする)について,基準値の設定を行った.基準値の設定に先立ち,Mann-Whitney U検定を用いて性差の検討を行ったところ,有意鎖は認められなかった.そのため,基準値は性差を考慮せず単一の値として設定することとした. OTの基準値はパラメトリック法を用いて設定した.まず,平均値±3SD反復切断法により飛び離れ値を棄却した後,対数正規分布パラメトリック法を用いて,最も正規分布に近い対数変換された分布について平均値±2SDの値を基準値として求めた.その結果,OTの基準値は0.15から0.75秒であった. 咬合の位置的,力的因子に関するパラメータについては現在解析中である.
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