【結果】p53遺伝子型における口唇口蓋裂自然発生率の検討したところ、確認した口唇口蓋裂は全てが唇裂を伴う口唇口蓋裂で口蓋裂単独発生は1例も認められず、またその発生率および上段に示す平均体重にp53遺伝子型による有意な差は認められなかった。この結果は、DNA障害を誘引する特別な要因が無い環境では、口唇口蓋裂発生にp53遺伝子欠損は影響しないこと示している。ここで環境要因の変化がどのように口唇口蓋裂発生に関与するかを評価するため、放射線照射を応用して同様の検討を行った。器官形成期である胎生9.5日にγ線照射を毎分1Gyで2Gy行い胎生18.5日に胎児を確認し、p53遺伝子型による発生率・平均体重への影響を検討した。平均体重は、写真およびグラフに示すように、p53遺伝子の正常なCL/Frが他の遺伝子型に比べ有意に減少していた。破裂形態による発生率の変化は、唇裂を伴う口唇口蓋裂の発生率ではp53遺伝子型による有意な差は認められないのに対し、口蓋裂単独の発生率はp53遺伝子が正常なCL/Frにおいて有意に高い傾向にあった。現在、口蓋におけるp53蛋白の局在、p53ノックアウトマウスにおける胎生期の口蓋形成様式の観察、別の系統マウスにおける口蓋裂感受性の相違について解析を行うべく準備を進めている。
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