研究概要 |
本研究は、口腔粘膜由来線維芽細胞(GF)の持つ特徴を詳細に検討し、皮膚由来線維芽細胞(DE)や、他の間葉系間質細胞との違いを明らかにすることを目的とした。まず、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)、脂肪由来幹細胞(ASC)、DF、GFが産生する創傷治癒関連因子、具体的には角化細胞増殖因子(KGF),血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(bFGF)、インシュリン様増殖因子(IGF)、形質転換増殖因子(TGF-β)をELISA法にて解析した。その結果、GFは、DFと比較し、KGFは約4倍、VEGFは約3倍を分泌していた。また、それ以外の因子は有意差を認めなかった。 次に、網羅的な解析を目的として、GF及びDFに着目し、DNAマイクロアレイにより遺伝子発現の違いを調べた。結果は、現在解析中であるが、2種類の細胞間に大きな発現差を認めなかった。 更に、GFが創傷治癒に対する影響を解析するために、表皮細胞と線維芽細胞との共培養を行い、培養線維芽細胞が皮膚角質化細胞に与える影響について検討した。培養線維芽細胞を、コラーゲンゲル中に包埋して培養した後、その表層に皮膚角質化細胞を播種し、液層と気層の間で共培養を行い、HE染色及び、抗PCNA抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。その結果、GF及びDFは表皮の角化や、表皮の厚さ、基底層の細胞増殖には有意差を認めなかった。 現在、ヌードマウス背部皮膚に皮膚パンチを用いて欠損の規格化を行っている。これをもとに創傷モデルを作成し、平成19年度は層の治癒過程に対して細胞注入を行い、移植細胞の影響について検討を行う予定である。
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