アクアポリン(AQP)は水輸送に関与する膜蛋白であり、ヒト唾液腺においてはAQP5が唾液の分泌に重要な役割を果たしていることが報告されている。また、遺伝子のプロモーター領域内に存在するCpGアイランドのメチル化は遺伝子発現を抑制することが示されており、細胞をDNA脱メチル化剤にて処理すると不活性化されている遺伝子の再活性化につながることが予測されている。 本研究においては、当教室において樹立した不死化ヒト唾液腺腺房細胞株(NS-SV-AC)および唾液腺導管細胞株(NS-SV-DC)を用いて以下の検索をおこなった。各細胞株におけるAQP5の発現を検索したところ、唾液腺腺房細胞においてのみAQP5の発現が認められた。一方、AQP5発現の認められなかった唾液腺導管細胞をDNA脱メチル化剤で処理すると、AQP5の発現が誘導された。また、DNA脱メチル化剤により誘導されたAQP5は導管細胞の水輸送能を増強させたことから、実際に膜蛋白として機能していることを確認した。さらに、AQP5遺伝子プロモーター領域内のCpGジヌクレオチドの脱メチル化を検索したところ、脱メチル化部位は複数箇所存在していた。そこで転写因子結合領域及び、その近傍のCpGに着目し、脱メチル化と転写活性の上昇を検索したところ、転写因子SP1結合領域に2カ所重要な部位が存在しており、これら2カ所が共に脱メチル化されたときにAQP5プロモーター領域の転写活性が著明に上昇することを確認した。
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