本研究では、高分子ポリマーの欠点である機械的強度の向上と疎水性であることから細胞接着の改善を目的に、アテロコラーゲン含有アパタイトセメントを用いて、各種の気孔径および組成の吸収性多孔質ポリマーを作製し、それぞれの基本物性および動物実験を用いた生体内吸収性についての評価を行うことを目的とした。 まず吸収性多孔質高分子ポリマーの調整には、ポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)を使用しショ糖を用いたsolvent casting/particulate leaching法にて作製した。続いて、骨再生に最適な気孔径および生体内吸収速度を示すポリマーの作製条件を決定するため、ショ糖結晶の大きさによる気孔径の調整を行った。つまり、0.2mm〜0.4mm、0.4mm〜0.8mm、0.8mm〜1.2mm、1.2mm〜2mmのそれぞれのショ糖を用いて平均気孔径の異なるポリマーを試作した。試作したポリマーの圧縮強さは、ショ糖径が大きくなるほど低くなった。また気孔径、気孔率は、ショ糖径が大きくなるにつれて高い値となった。次に、吸収性多孔質高分子ポリマーの生体内吸収性の検討のため、ラットの骨内と皮下に移植し、組織学的検討を行った。その結果、ショ糖径が0.8mm〜1.2mm、1.2mm〜2mmを使用したポリマーが他の試料と比較して、破骨細胞による吸収が多く認められ、新生骨の量も有意に多かった。最後に、PLGAにアテロコラーゲン含有非崩壊型アパタイトセメントを混合した高機能性バイオセラミックス複合体の作製とその物性および生体内吸収性の評価を行った。ショ糖径は上記実験の結果から0.8mm〜1.2mm、1.2mm〜2mmを用いて作製した。高機能性バイオセラミックス複合体は、吸収性多孔質高分子ポリマーと比較して、機械的強度は有意に高く、また気孔径、気孔率はほとんど変わらなかった。また、高機能性バイオセラミックス複合体は、やや破骨細胞による吸収は少なかったが、新生骨の量は有意に多かった。
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