これまで、口腔外科領域では、顎骨に発生した嚢胞や腫瘍などの手術後に生じる骨欠損に対し、自家骨移植が主に用いられてきた。しかし、近年では様々な問題点が指摘されたため、生体材料が開発され、広く臨床応用されるようになってきた。 しかし、その適応部位や特徴は様々で、その利点を生かし、欠点を補う複合的な材料の開発・研究はなかった。今回、われわれは有機材料と無機材料を用い、その長所を生かしたハイブリッド型材料を開発し、さらに自ら生体内の環境に適応し、治癒過程を促進させるインテリジェントマテリアルの開発・研究を行う。そこで本年度は、 1.有機材料および無機材料のpH測定と溶解実験 有機材料であるPLGAを径10ミクロンで粉砕したものを蒸留水中に浸漬しpH測定した結果、経時的に蒸留水はアルカリ性に傾いた。また、無機材料であるα-TCPおよびβ-TCPの粉砕物を同様に蒸留水に浸漬し、pH測定を行ったところ酸性に傾いた。なお、その際、α-TCP>β-TCPの溶解性を示す結果となった。なお、PLGAの溶解性は、無機材料であるTCPに比較して、緩徐な溶解性を示した。この結果を踏まえて、有機材料であるPLGAに混和させる無機材料をβ-TCPと決定した。 2.有機材料および無機材料から成るハイブリッド材料の作製 適切な混合率を決定するため、まずPLGA :β-TCPの混合比を10:1〜5にし、蒸留水中に浸漬させた。その結果、PLGA :β-TCPの混合比を10:1に調節したものが比較的pHの変化が少なかった。次いで、sugar crystal法により、格子状のPLGAを作成した後、β-TCPを溶解させた混濁液を噴霧させ、ハイブリッド材料を作成した。一方、まずウレタン法から作成した格子状β-TCPを作成・sugar crystalに浸漬し、PLGA溶解物を添加しハイブリッド材料を作成した。 次年度は、本材料を用いて細胞培養実験・動物埋入実験を行う予定である。
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