研究課題
自己移植後の形態的、機能的維持についての検討マウス唾液腺組織から分離した唾液腺上皮細胞を培養し、その細胞から再構築した唾液腺細胞塊をマウス体内に移植し、経時的に観察した。再構築唾液腺細胞塊を顎下腺周囲に移植し、5日後に組織学的変化の観察を行った。その結果、個々の移植再構築唾液腺細胞は委縮傾向を示したが、細胞接着やE-カドヘリン、デスモソームファミリー(デスモプラキン、デスモグレイン、デスモコリン)など細胞間接着装置の軽度発現を認めた。しかし、細胞外基質(I・IV型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン)はほとんど認められず、細胞増殖因子(EGF、HGF、FGF family)、形態形成因子(TGF-β、Shh)の明らかな発現は確認できなかった。機能的評価として、移植再構築唾液腺細胞での抗唾液アミラーゼ免疫組織染色では、わずかに発現がみられたものの、固有顎下腺組織との融合や唾液アミラーゼ発現の増強はなかった。唾液腺の再生において重要な因子を検索するため、放射線治療後に手術で摘出した唾液腺組織を用いて免疫組織染色で検討した。照射後の唾液腺組織では腺房細胞の萎縮や変性が著明に認められるとともに、IV型コラーゲンとHGFの発現低下の傾向がみられ、唾液腺組織再生においてそれらの因子が関与している可能性が示唆された。今後、唾液腺上皮細胞に放射線照射で細胞障害を加えIV型コラーゲンとHGFの関与についてさらに検討し、唾液腺上皮細胞の自己移植の条件について検討を行う予定である。
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