研究概要 |
口腔扁平上皮癌の予後を左右する因子として, 癌細胞の浸潤能がある。腫瘍の転移には細胞間接着の減弱, マトリックスメタロプロテアーゼなどの活性化, 細胞の運動の亢進などが重要であると考えられており, なかでも細胞骨格であるアクチン束状化のダイナミックな変化が重要な因子の一つであると認識されている。そこで, 本研究では口腔扁平上皮癌におけるアクチン束状化タンパク質actlnln-4および足場蛋白であるEMS1(cortactin)の発現と臨床病理学的因子との関連を明らかにすることを目的とした。当科で治療を行った口腔扁平上皮癌の生検時標本および正常口腔粘膜症例を用い, 抗ヒトactinln4抗体および抗cortactin抗体で免疫組織化学染色を行った。さらに, 腫瘍細胞株を用いてactinin4、EMS1に関して, 半定量RT-PCRでmRNA発現の解析を行い, 細胞生物学的特性との関連を検討した。actinin4の発現は正常口腔粘膜および口腔扁平上皮癌にみられたが, 口腔扁平上皮癌において優位に過剰発現していた。また, actlnln4では浸潤型と、EMS1では腫瘍サイズ, 頸部所属リンパ節転移および浸潤型との間に相関性(P<0.05)がみられ, 癌細胞浸潤能との相関が示唆された。また, 培養細胞においてsiRNAにより各々のmRNAの発現を抑制したところ、癌細胞の浸潤能の有意な低下がみられ、口腔扁平上皮癌において癌細胞浸潤に関与していることともに分子標的治療のターゲットとなりうる可能性が示唆された。
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