口腔癌34例と食道癌40例でHedgehog signalの活性化を検討したところ、(1)食道癌ではShhの過剰発現とstage・リンパ節転移、及びSmoの過剰発現とリンパ節転移の間に有意な相関を確認した。(2)Ptchの発現動態は口腔癌と食道癌で異なっており、口腔癌ではPtchの過剰発現とリンパ節転移の問に相関を認めたが、食道癌ではstage・転移の有無に関わらずPtchの発現は低下・消失していた。(3)食道癌ではShhの発現亢進・Ptchの発現低下・消失およびSmoの過剰発現に有意な関連を認めた。(4)食道癌ではPtchの発現低下・消失ないしはSmoの過剰発現とcyclin D1の発現誘導が密接に関連していたが、口腔癌では相関を認めなかった。これらの知見からレセプターであるPtchの発現動態は臓器により異なっているが、いずれにおいてもHedgehog signalの活性化ががんの進展に関与することが示唆された。さらに角化嚢胞性歯原性腫瘍の発症にもHedgehog signalの異常が関与していることが明らかとなっているので19例の角化嚢胞性歯原性腫瘍および正角化性歯原性嚢胞におけるHedgehog signalを検討した。その結果、(1)大多数の症例でHedgehog signalの発現異常が確認された。(2)Smoの発現は術後の再発と相関していた。(3)上皮島が存在する症例ほどSmoは強発現していた。(4)正角化性歯原性嚢胞と比較し角化嚢胞性歯原性腫瘍でSmoの発現は高かった。(5)Shh・Ptch・Smoの発現パターンに関連を確認した。これらの知見はHedgehog signalが角化嚢胞性歯原性腫瘍の発生のみならず分化および再発にも関与しているという可能性を示唆するものである。現在、口腔癌・食道癌ならびに角化嚢胞性歯原性腫瘍におけるHedgehog signalの詳細について検討中である。
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