顎関節疾患者にヒアルロン酸の低分子化が顎関節部の骨代謝を中心とした病態形成にいかに関与しているかについて、滑膜細胞の有する破骨細胞支持能に注目して研究を行った。 これまでの研究で破骨細胞支持能を有することがすでに報告されているマウス間質系細胞ST2細胞を種々の分子量(8〜2000kDa)のヒアルロン酸を添加して培養を行った。培養後の細胞よりサンプルを抽出し、生科学的手法にて、生物学的活性の定量化を行った。 (1)細胞増殖能; MTT法を用いた細胞増殖活性の検索において、低分子量ヒアルロン酸はST2細胞の増殖を抑制する一方で、高分子量ヒアルロン酸はその増殖活性を増強した。 (2)アルカリホスファターゼ活性;高分子量ヒアルロン酸の添加により、ST2細胞のアルカリホスファターゼ活性は著明に増強されたが、低分子量ヒアルロン酸添加群では変化は認められなかった。 (3)RANKLタンパク発現;免疫蛍光染色法を用いた検討において、低分子量ヒアルロン酸添加によりデキサメタゾン、活性型ビタミンDに誘導される破骨細胞分化因子であるRANKLの発現は著しく増強された。FACSを用いた定量においても同様の結果が得られた。 以下の結果より、低分子ヒアルロン酸が破骨細胞支持細胞に作用し、その破骨細胞分化支持能を増強することが明らかとなった。よって、顎関節疾患者の顎関節骨液中のヒアルロン酸分子量の低分子化は、顎関節症の病態形成になんらかの関与を有することが示唆された。
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