研究概要 |
顎関節症は, 顎関節内に加わる過剰圧であり, 関節周囲組織で虚血再灌流障害が活性酸素を誘発させ直接的な組織駸襲を与えると同時に炎症性メディエーターを助長し更なる炎症反応を助長することが示唆されている. 顎関節症に障害作用をもたらす活性酸素としてhydroxyl radical (HO) およびnitric oxide (NO) を顎関節症患者滑液から採取後に5, 5-dimethyl-1-pyrrolin-N-oxide (DMPO) をスピントラップ剤としたX-band ESR法およびNO電極法によりそれぞれ測定し実際の臨床症状との比較検討を行った結果, 顎関節疼痛とHO濃度は相関が認められたが, 顎関節疼痛とNO濃度は逆相関している結果となった. また顎関節健常者と比較検討した結果, 健常者より高値を示したが統計学的有意差は得られなかった. しかしながら顎関節症患者滑液中のHOとNOは逆相関の関係にあることが統計的に明らかとなった. これらの結果から顎関節症に関わる活性酸素種の分子スキームとして炎症に伴い過剰に産生されたsuperoxide anion radical (02^-) が滑液中でsuperoxide dismutase (SOD) とiron ion (Fe^<3+>) またはNOによる3者の競合反応が生じると考えられ, これらを反応速度定数で示すとO_2^-とFe^<3+>の反応速度定数は10^6M^<-1>sec^<-1>でFe^<3+>はFe^<2+>と変化しこれはFenton反応に利用される. さらにO_2^-とSODの反応速度は2.0×10^9M^<-1>sec^<-1>でH202に不均化され, その後フェントン反応によりHOが産生する. しかしながら0_2^-とNOの反応速度定数は6.7×10^9M^<-1>sec^<-1>でありO_2^-とSOD不均化反応の3倍以上でありNOはperoxinitrite (ONOO) に変化し組織障害をもたらす. また炎症の軽減にともないO2^-濃度が減少する事によりNO濃度が安定化すると考えられた. またHOの産生はO2^-由来以外に生体内に多く存在するH2O2やアラキドン酸カスケードなどから発生し炎症症状により増減をすると考えられた. また, L-band ESRによる動物実験から過剰な咬合ストレスによる虚血再灌流障害実験からのフリーラジカルの発生は抑制的結果となりフリーラジカルに対する生体防御反応が存在する可能性が強く示唆された.
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