生体内での癌細胞排除帰転は、抗原提示細胞(APC)が腫瘍関連抗原(TAA)を認識し、T細胞にTAAを提示することから生じる。したがって、発癌の初期段階ではマクロファージをはじめとしたAPCの機能が抑制されていると考えられている。マクロファージ活性化因子として報告されているGcMAFは、Gc蛋白のO型糖鎖が修飾をうけて生成される。すなわちある種の癌細胞はO型糖鎖を分解することでマクロファージの活性化が抑制し、宿主免疫を抑制していることで発癌を起こすと考えられる。本年度は、ヒト唾液腺癌細胞由来alpha-acetylgalactosaminidase(以下alpha-Nagalase)につき検討を行い、alpha-Nagalaseがendo活性でGc蛋白の、exo活性でGcMAFの脱糖鎖に関わることをウエスタンブロットにて確認した。GcMAFにて賦活化したマクロファージにalpha-Nagalaseを作用させるとマクロファージの蛍光ビーズ食食能が著明に低下し、以上の結果からalpha-Nagalaseが宿主免疫におけるマクロファージ活性の抑制に関わることが示唆された。またさらなるO-glucanase活性物質の同定を目指して、ヒト単球マクロファージにGcMAFを作用させ、DNAマイクロアレイにて発現量の変化する遺伝子のスクリーニングを行っている。本研究結果により、発癌初期における宿主免疫抑制機構の一部が明らかになりつつある。
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