研究概要 |
本年度は、骨関連細胞に対するポリリン酸の作用につき検討を行った。 マウス頭蓋骨由来骨芽細胞に対して平均鎖長35,60,100のポリリン酸を作用させると、ポリリン酸は平均鎖長35以上では鎖長依存的に骨芽細胞増殖が抑制され、またフローサイトメトリーによる検討で骨芽細胞のアポトーシスが誘導されていることが示唆された。しかしながら生存細胞のアルカリホスファターゼ活性についてはこれを増大させた。一方、破骨細胞前駆細胞としてのマウス骨髄マクロファージに対しては、骨芽細胞との共培養下での破骨細胞分化が、ポリリン酸の鎖長依存的に抑制され、その作用は分化後期に対する抑制作用であることを示唆するデータが得られた。また成熟破骨細胞に対しポリリン酸を添加すると、pit formation assayによる検討で、骨吸収能のポリリン酸鎖長依存的な抑制が観察された。以上より、ポリリン酸は骨芽細胞の増殖を抑制するが機能を亢進する作用もあるのに対し、破骨細胞に対しては分化と機能の双方に抑制的に作用することで、結果的に骨の添加に作用する可能性が考えられた。 またポリリン酸ホスファターゼによるポリリン酸分解能を、放射性同位元素ラベルしたリンを用いた系で検討した。内軟骨性骨化のin vitro分化モデルであるATDC5細胞、および骨芽細胞前駆細胞のMC3T3-E1細胞に平均鎖長60のポリリン酸を作用させ、リン酸添加群とポリリン酸添加群の比較を行ったところ、ポリリン酸添加1週間では両者に差は見られないが、添加2週後にはATDC5細胞では双方の群でホスファターゼ活性が上昇し、MC3T3-E1細胞ではポリリン酸添加群にのみ活性の上昇がみられた。このことからポリリン酸の利用は細胞間で異なる可能性が考えられた。
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