本年度は、ポリリン酸の骨形成に対する作用につき培養細胞を用いた研究を中心に行った。マウス骨芽細胞前駆細胞株MC3T3-E1、軟骨前駆細胞株ATDC5に対して平均鎖長60のポリリン酸を作用させると、MC3T3-E1細胞では培養18日目、ATDC5細胞では培養21日目において、石灰化基質の形成が充進していることがアリザリンレッド染色にて示され、アルカリホスファターゼ活性の亢進がみられた。また骨基質蛋白であるオステオカルシン、オステオポンチン、I型コラーゲンの発現がmRNAレベルで増加した。このことからポリリン酸は骨基質形成を促進する作用を有することが示唆された。しかしながらリン輸送担体Na/Pi2やピロリン酸輸送担体ANKの発現は両細胞間で異なっていた。また、ポリリン酸の作用機構につき、放射性同位元素ラベルしたリンを用いた系で検討した。ポリリン酸添加2週後に、MC3T3-E1細胞ではポリリン酸添加群において、ATDC5細胞では双方の群で分解産物の生成が増加した。また分解産物を薄層クロマトグラフィーで展開した結果、分解産物としてオルソリン酸、ピロリン酸のほか、リン酸分子3以上のポリリン酸が検出された。 以上からポリリン酸の利用は骨形成細胞間で異なること、またポリリン酸は骨基質の形成においてexo-およびendo-polyphosphatase活性を持つ物質により分解されていることが示唆され、ポリリン酸の作用機構が明らかとなる可能性が示された。
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