研究概要 |
腺様嚢胞癌は悪性唾液腺腫瘍であり口腔領域の悪性腫瘍としては扁平上皮癌に次いで発生頻度が高い疾患である.口腔領域では比較的遭遇することが多く、また特徴的な病態を示す疾患である腺様嚢胞癌であるが、いまだに不明な点が多く、その理由として実験モデルが確立されていないことが挙げられる. われわれは新たに腺様嚢胞癌培養細胞株ACCNSを樹立した.ACCNSはタイプIコラーゲンゲル内での3次元培養を行うと、充実様や嚢胞様のコロニー形態を示し、腺様嚢胞癌の病理組織型における充実型および篩状型と類似した組織像を示した.さらに、篩状型コロニーではその内腔にムチカルミン染色で陽性を示す粘液の貯留を認め、またkeratin,vimentin,α-SMAなどの免疫組織学的検討では細胞株由来の腫瘍とほぼ同様の蛋白発現を認め、ACCNSの3次元培養を行うと由来腫瘍の特性をほぼ反映していることが確認され、腺様嚢胞癌実験モデルとして非常に有用なモデルの確立に至った.(平成18年度) そこで、本モデルを利用し腺様嚢胞癌の浸潤機構に重要な役割を果たす因子について検討を行った.ACCNSの性質は他の腺様嚢胞癌細胞株とは異なり、浸潤機構におけるセリンプロテアーゼの関与は認められなかったため、MMPsの関与が考えられた.そこで、MMPsを阻害したところコロニー形成は著しく抑制されコロニー形成すなわち浸潤機構にMMPsが深く関与していることが示唆された.しかし、MMPsのサブタイプの同定には至っておらず、現在も解析を継続している. また、腺様嚢胞癌では神経や脈管への好浸潤性が知られており、invasion chamberを用いて神経や脈管に関与する因子、たとえばGDNF、N-CAM、SDF-1などについて細胞遊走能への影響について検討を行った.しかし、明らかに細胞遊走能に影響を与える因子は同定できず、継続して腺様嚢胞癌の神経、脈管への浸潤に対して関与する因子の同定を行っている.
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