研究概要 |
BALB/c-bm/bmマウスは、先天的に短肢症を生じるマウスであるが、このマウスのうち、約10%のものが水平(左右)的交叉咬合あるいは、反対咬合を自然発症する。このマウスは先天的に軟骨のプロテオグリカンの低硫酸化を認めるが、このことと交叉咬合自然発症の関連について詳細な点についてはいまだに明らかになっていない。本年は、頭蓋顎顔面部の骨の形態の精査、および、蝶後頭軟骨結合部組織学的検討について予備実験を行い、サンプル採得時期を決定する事を目標とした。 上記研究計画に基づき、サンプル採得を行うためにまず初めに、BALB/c-bm/bm系マウスの交配から開始した。このマウスは他のマウスと違い交配の確立が極めて悪く、また一度に出生する個体数も少ない(2〜4)ことと、出生後に死亡するマウスの率も高かったため、BALB/c-bm/bm系マウスのサンプルを得ることに時間がかかったが、得ることができた。 続いて、BALB/c-bm/bm系マウス群と、対照群としてBALB/c系マウス群の生後4, 8週齢の頭蓋骨の組織標本を作製した。顎顔面頭蓋のgrowth siteといわれている蝶形骨間軟骨結合部の組織標本を作成し、軟骨結合部での硫酸化を、アルシアンブルー臨界濃度法、および増感鉄ジアミン染色を行い比較した。その結果、BALB/c-bm/bm系マウス群は対照群と比較して軟骨細胞の配列も不正なうえに軟骨基質が明らかに低硫酸化していることが認められた。以上より、BALB/c-bm/bm系マウス群では、頭蓋底の発育が軟骨結合部の軟骨の低硫酸化による影響を受けている可能性が示唆された。 今後頭蓋骨の軟骨結合部での免疫組織学的検討を予定しており、蝶形骨間軟骨結合部の組織標本を作成し、軟骨結合部で軟骨形成の各段階に発現する因子について免疫染色を行う予定である。これについては現在すでに標本作成を開始している。また、頭蓋顎顔面部の形態学的検討も予定している。これについては、既に予備実験としてマイクロCTでの撮影を行っており、今後各週齢での撮影及びデーターの解析を進める予定である。
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