本研究の目的に同意の得られた小児78名とその小児の家族18名を対象に、P.gingivalisの検出を16S rRNA遺伝子および線毛遺伝子のプライマーを用いたPCR法により行った。さらに、線毛の型別による親子間での伝播の可能性についても検討を加えた。 その結果、小児口腔内のプラークサンプルにおけるP. gingivalis 16S rRNA遺伝子の増幅によるP.gingivalisの検出では、78名中63名(80.8%)に検出が認められた。 P. gingivalis線毛遺伝子の増幅を16S rRNAプライマーを用いてP. gingivalisの検出が認められた小児63名について行い、その結果、69.8%の小児がI型線毛株のみを有しており、全体ではP.gingivalisの検出が認められた小児の76.2%がI型線毛株を有していた。II型線毛株は、単一株での検出は認められなかったものの、I型とともに検出された小児が2名(3.2%)認められた。III型線毛株は、単体あるいはI型とともに4名(6.3%)から検出されたが、IV型線毛株は検出されず、線毛遺伝子で増幅の認められなかったものが20.6%あった。 線毛の型別によるP. gingivalisの伝播経路については、10家族を対象にPCR法を行った結果、9家族において母親とその子供の線毛型は一致し、母子間での垂直伝播が起こっていることが示唆された。しかし、子供が保有している線毛型を母親が保有していない家族も1例認められ、P. gingivalisが母親以外からも伝播することが示唆された。
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