研究概要 |
免疫グロブリンG(IgG)のFc部に対するレセプター(FcγR)は好中球、単球などの免疫担当細胞表面に発現し、免疫複合体の処理に大きな役割を果たす。また、FcγRには機能的遺伝子多型の存在が知られているが、発現頻度には人種差が存在している。我々はこれまでに日本人においてFcγR機能的遺伝子多型が歯周疾患の再発率、重症度、抵抗性にかかわること、遺伝子多型に基づく好中球機能の差が歯周炎再発と関連していること、また、白人の慢性歯周炎患者においてFcγRIIa遺伝子多型が遺伝的リスクファクターになりうることを報告した。FcγRIIaは単球上に発現しサイトカイン産生を調節する役割を果たす。単球におけるサイトカイン産生にFcγRIIaの遺伝子多型が関与するのかを検討するため、以下に記す実験計画にて実施した。 健常者よりヘパリン真空採血管にて末梢血を採血し比重遠心分離により末梢血単核球を分離、RPMI1640に浮遊ヒトIgG1、IgG2で刺激培養、一定時間後細胞内蛋白輸送阻害薬を加える。 細胞表面に発現しているCD14をPEにて染色し、細胞膜処理を行った後細胞内のIL-1βをFITCにて染色Flow cytometerにて解析 また、FcγRIIa遺伝子多型はアレル特異的PCR法にて遺伝子型を決定した。 この結果、IL-1βを産生する細胞の割合はヒトIgG1、およびIgG2の濃度依存的に上昇した。 FcγRIIa-H/H131はFcγRIIa-R/H131に対し有意にIL-1β産生細胞の割合が高いことが示された。(FcγRIIa-H/H131 vs.R/H131;38.26±5.1vs.11.60±5.7(IgGl),70.42±5.1vs.40.70±9.3(IgG2) p<0.05:Mann-Whitney Utest)以上のことから、FcγRIIa遺伝子多型はCD14陽性細胞におけるFcγRIIaを経由したサイトカイン産生に影響を及ぼすことが示唆された。FcγRIIA遺伝子多型が、個人の歯周組織破壊という歯周疾患感受性の一要因になりうることが、機能的側面から、推察される。
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