研究概要 |
歯周炎は細菌感染によって引き起こされる慢性感染症である.一方で歯周炎組織より単純ヘルペスウイルスなどのウイルスゲノムも検出されており,歯周炎の病態形成におけるウイルスの関与も示唆されている.そこで本年度においては歯周炎におけるウイルス感染の影響を調べるために,Toll like receptors(TLRs)およびウイルス感染により産生が誘導され,強力な抗ウイルス作用をもつinterfbron-α(IFN-α)の発現について歯肉炎と歯周炎において比較検討を行った. 新潟大学医歯学総合病院を受診し,インフォームドコンセントの得られた歯周炎患者群59名と歯肉炎患者群27名を被験者とした.病変部ポケット上皮を含む歯肉組織中のTLR2,4,5,7,9およびIFN-αの遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて定量解析を行なうことにより以下のように結果が得られた. 1.TLR2,4,7,9の遺伝子発現は歯肉炎群と比較して歯周炎群において有意に高かった.(P<0.01) 2.TLR5の遺伝子発現は2群間で差は認められなかった. 3.TLR2とTLR4,TLR2とTLR7,TLR4とTLR7の発現にそれぞれ正の相関が認められた.(P<0.0001) 4.IFN-αの遺伝子発現は歯周炎群において有意な上昇が認められた.(P<0.05)(Mann-Whitney U-test, Bonferroni補正). 検索したTLRsの中でTLR5のみは2群間で差が認められなかったことから,歯周炎の病態における関与はその他のTLRsに比べて低いと考えられた.TLR2,4に加えてTLR7,9の発現も歯周炎群で上昇していることから,ウイルスが歯周炎の病態形成に関与する可能性が示唆された.IFN-αは歯周炎群で発現が高<,その産生細胞であるpDCの歯周組織における存在について今後検討が必要である.
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