研究概要 |
【目的】 近年,脂肪細胞からのアディポサイトカイン産生に,マクロファージが関与する可能性が報告されている。すなわち,脂肪細胞周囲血管に集積したマクロファージ由来のサイトカインが脂肪細胞に働いて,アディポサイトカイン産生が亢進し糖尿病や動脈硬化が増悪するという,脂肪細胞・マクロファージ相互作用説である。一方,軽微な慢性感染症が,動脈硬化の増悪因子として働く可能性が示唆されている。本感染は虚血性心疾患の予知因子である高感度CRP値を上昇させる。そこで,細菌LPSがマクロファージを活性化し,さらに脂肪細胞からの炎症性サイトカイン産生を促進するとの仮説を立てた。ここでは,マクロファージ・脂肪細胞共培養系にLPSを作用させた場合のアディポサイトカイン産生性を検討した。 【方法】 分化3T3-L1細胞とRAW264.7細胞の共培養系を確立し,低濃度のLPS刺激下でのIL-6,TNF-αおよびMCP-1の産生性を調べた。抗TNF-α中和抗体と外因性TNF-αがIL-6産生性に及ぼす影響も調べた。 【結果】 3T3-L1とRAWの共培養系にLPSを添加することで,培地中のIL-6とMCP-1濃度が相乗的に増加した。IL-6はLPS刺激のみの脂肪細胞からも産生されたことから,主な産生細胞は脂肪細胞と考えられた。TNF-αについては,共培養することによる大きな変化は見られず,LPS刺激でRAW細胞からの産生が亢進したことから主な産生細胞はマクロファージと考えられた。抗TNF-α中和抗体の添加でIL-6産生が部分的に抑制された。 【結論および考察】 LPSに代表される感染抗原に晒されたマクロファージがTNF-α等の液性因子を介して脂肪細胞を活性化し,脂肪細胞からのIL-6産生を促進する可能性が示された。これにより産生されたIL-6は門脈を介して肝臓に集積し,肝細胞からのCRP産生に関与することが考えられた。
|