薬物誘発性歯肉増殖症は、カルシウム拮抗剤、抗てんかん剤あるいは免疫抑制剤の服用者の一部に認められる副作用である。いくつかの疾患においてその発症に関与する遺伝的素因として一塩基多型が知られている。私たちは以前、α2インテグリン+807C/T遺伝子多型が歯肉増殖症と関連することを示したが、この遺伝子多型はアミノ酸変異を生じないため発症との直接関与は考えられず、+807近傍の他の一塩基多型との協調関与の可能性が考えられた。そこで本研究では、歯肉増殖症の発症と+807遺伝子多型と連鎖不平衡の関係にあるα2インテグリン+1648G/A遺伝子多型との関連について検討を行った。 被験者はカルシウム拮抗剤、フェニトインあるいはサイクロスポリン服用患者98名を対象とし、増殖症患者48名(増殖症群)と非増殖症患者50名(対照群)から採血を行った。その結果、α2インテグリン+1648G/Aの遺伝子分布は、GGが増殖症群と対照群でそれぞれ95.6%と88.7%と著しく高く、GAはそれぞれ4.4%と9.4%、そしてAAは対照群の1例のみであった。また、アレル頻度については+1646Gアレルが増殖症群と対照群でそれぞれ98.8%と94.7%で、+1648Aアレルがそれぞれ2.2%と5.3%であり、両群間に有意な差は認められなかった。これらの結果は、薬物誘発性歯肉増殖症の発症はヒトα2インテグリン+1648G/A遺伝子多型と相関しないことを示している。しかしながら、歯肉増殖症はα2インテグリン+807C/T遺伝子多型と+1648G/A以外のその他の遺伝子多型との協調を介して発症することも考えられる。
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