歯周病は慢性炎症の病態を呈し、炎症の増悪に血管新生が深く関わっている。本研究は、血管新生に深く関与する血管内皮細胞増殖因子VEGFに注目し、歯周病の進行を抑制する方法を探るという観点から、PA/plasmin systemをターゲットにメカニズムを明らかにしVEGFのレセプター阻害剤などを用いて効果的な抑制因子を探るものである。 平成19年度は次のような結果を得た。ヒト歯周組織由来の線維芽細胞(歯肉線維芽細胞)のin vitro培養系に、血管新生に対して強い作用を持つVEGF-AのサブタイプであるVEGF-A_<121>とVEGF-A_<165>を作用させた。線溶系にて働くuPAはプラスミノーゲンをプラスミンに変える活性化因子であり、プラスミンはpro-MMPsを活性化することが知られているため、まずMMPs活性をザイモグラフィーにて検討した。その結果、VEGF-A_<121>では、pro-MMP-9、pro-MMP-2、active-MMP-2の活性を濃度依存的に亢進していることが確認された。一方、VEGF-A_<165>ではpro-MMP-9、pro-MMP-2、active-MMP-2いずれの活性にも影響を及ぼすことはなかった。以上の所見から、炎症の増悪にはVEGF-A_<121>が関与している可能性が示唆された。平成20年度はVEGF-A_<121>を中心にin vitroでの解析をすすめ、また、歯周病患者の歯肉溝滲出液については引き続きサンプル数を増やしuPA、MMPsの検出を行っていく予定である。
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