研究概要 |
歯周病と骨粗鬆症は,骨吸収という共通の症状で進行することから,双方向性の関与が示唆され,疫学的な研究が多数報告されているが,両疾患の関与機序に関する詳細なメカニズムについては,推論の域をでていない.今回の研究においては,エストロゲン欠乏状態では炎症性細胞から,破骨細胞を活性化させる多数のサイトカイン類が増加するという仮説のもと,有意に歯槽骨吸収が進行することを確認している骨粗鬆症ラットモデルを使用し,マイクロアレイにより歯周組織中の骨吸収に関連するサイトカインの遺伝子発現を網羅的に検索することを目的とした。 7週齢のSpraque-Dawley系ラットに実験的骨粗鬆症を誘発させる目的で,卵巣摘出術(OVX)を施行した.OVXラットに実験的歯周炎を惹起する目的で,上顎右側第二臼歯に縫合用ナイロン糸を結紮,4日後に上顎右側第二臼歯頬側歯肉と同周囲歯槽骨を摘出し、totalRNAを抽出後、蛍光標識化したcDNAを合成し、マイクロアレイでの解析を行った。コントロールと比較し2倍以上の発現増加を示した遺伝子を抽出した。その中から、Real-time PCR法を用いて主に破骨細胞の活性化に関与する遺伝子発現量の測定を行った。RANKLやTNF-α,IL-6の発現は、OVXラット由来の歯肉、歯槽骨においてコントロールと比較し有意に高かった。以上のことから、骨粗鬆症により骨吸収活性が増加している状態で歯周炎を併発すると歯槽骨吸収がさらに促進するメカニズムの一端が示唆された。
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