本研究の目的は、成人を対象に、代表的な甘味物質である蔗糖が誘発する鎮痛について検証することである。本研究は山口大学医学部附属病院医薬品等治験・臨床研究等審査委員会から事前に研究実施について承認を得て行なっている。 科学研究費助成開始に伴い、平成18年8月〜9月の間に計画書通りに予備実験を実施した。予備実験では、健康な成人男性7名を対象に、冷水の中に手を浸けることで痛みを生じさせるCold pressor test(CPT)を用いて冷痛に対する蔗糖の影響について検証した。その結果、蔗糖溶液を口腔内に含んだ上でCPTを行うと、冷感覚から冷痛覚に変化するまで時間(潜時)が蒸留水を含んだ時に比べて有意に延長した。つまり、蔗糖溶液による甘味刺激によって痛覚感受性は低下し、痛みに対する除痛効果が期待できることが明らかになった。この予備実験結果については既にデータをまとめて、今春(平成19年6月)開催予定の看護系国際学会(International Council of Nursing Conference)に演題登録した。演題は受理されており、現在は発表準備作業を行っている。また、この予備実験結果については可及的に短報として近く投稿する予定である。 予備実験を経て、現在は科学研究費の申請書に計画した通り、健康な大学生男女を対象に実験を進行中である。これまでのところ、被験者における有害事象などは生じておらず、また使用機器に関する不備等も生じていない。実験実施人数(平成19年4月現在)はこれまでのところ目標被験者数の2割程度(約20名)であるが、5月の連休、大学生の夏季休暇および冬季休暇の休暇日を中心に実験を継続していく予定である。
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