研究概要 |
筋肉内注射(以下,筋注)では,筋に薬液を注入しても皮下に漏れる可能性があると言われている.これを防ぎ薬液を筋層に封入する工夫としてZ-track法やair-bubble法が海外文献で紹介されているが,日本では殆ど取り上げられていない.そこで薬液封入法の意義を検討することを目的に研究を行った. まず,海外文献調査の結果,air-bubble法はガラス製注射器において薬液を全量注入するための方法で,ディスポーザブル注射器が普及した当時に書き換えられるべきテキストに誤って残ったものであることが分かった. 次に,臨床の現状として精神科でのデポ剤筋注時の薬液封入法の実態把握のため,A県内の精神科看護師への質問紙調査を実施した.有効回答397部(有効回答率42.9%)について分析した,注射部位は三角筋のみ20.3%,中殿筋のみ37.0%,三角筋と中殿筋42.7%であり,デポ剤で選択的に殿部を用いているため,一般科での調査結果より中殿筋選択の割合が高かった.疑問や困難点には針を刺したまましばらく維持する,揉まないなどが挙げられ,油性製剤の薬効の持続を狙う工夫に苦慮があった.また,薬液封入法への関心は高かった(90.9%)が,知っている(12.6%),実施経験あり(7.8%)はわずかであった.Z-track法では本当に層がずれているのか,密閉されているのか,効果に差があるのかなど,経験はあっても根拠や効果の認識が薄いことが分かった.またair-bubble法をZ-track法と併せて行うという誤った認識があったため,今後注意を呼びかける必要性が確認された. さらに,2年目の実証研究に向けての予備実験として,実験用動物にZ-track法とそうでない方法の二法を用いて筋注を行った.使用した薬剤プロステチン^<【○!R】>は混濁注射液であるため,薬液注入部を後から追って肉眼的に観察できることを確認した.
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