本研究の目的は、看護師の「安楽なケア」実践を促進するためのプログラムの開発と評価である。初年度の平成18年度はプログラムの基盤となる「安楽なケアモデル」の構築にむけ、モデルの洗練を行った。平成19年度は、本研究課題である「看護師の「安楽なケア」実践を促進するためのプログラムの開発と評価」を段階的に実施するため、モデルの検証を行った。平成20年度は、プログラムの作成と評価に向け、これまでの研究成果を踏まえて、プログラム内容の選定を行った。プログラムは、検証された「安楽なケアモデル」の29の要素(以下、「安楽要素」)の具体的実践内容で構成することとした。また、「安楽なケア実践」の様相を、その内容から明らかにするため、個々の看護師の安楽実践内容を、「安楽要素」をその枠組みとして分析した。その結果、個々の看護師の実践している安楽なケアには幅があり(安楽要素 : 2〜13)、多様であることが再確認された。多く確認された安楽要素は、「苦痛の軽減」「体位保持」に関連するものであり、これら以外の27の安楽要素についての内容をプログラムにおいて強調する必要があることが示された。安楽要素を基盤するプログラム内容の評価を得るため、10年以上の臨床経験があり(Benner's ModelにおいてExpertのステージ)、卓越した看護実践を行っていると評される看護師(総台病院の看護教育担当者を含む)へのインタビューと、基礎看護学領域を専門とする看護研究者にコンサルテーションをうけた。その結果、プログラム内容は、看護師の「安楽なケア」内容として妥当であるという評価を得た。だが、一方で、看護師の「安楽なケア」実践を促進するには、その内容の多様性から、具体的看護内容の教授はもとより、看護実践についての概念が形成される看護基礎教育における取り組みが必要であることが指摘された。
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