本研究では、看護必要度をアセスメントする看護師の評価者養成のために、まず、第1に評価者間の判断が異なった事由に関する分析を行ない、評価者の一致度を高めるための教育研修の方法論を検討することを目的とした。 平成18年度は、システムの内容の検討を行なう上で評価者によって同一患者におけるアセスメント結果が異なる理由について分析した。 具体的には、看護必要度のアセスメントが未経験の看護師群に対する評価者研修を行い、看護必要度の理解、看護必要度チェック項目における評価の視点に関する講義を行ったうえで、ビデオによる患者評価テストを研修中に2回行った。この研修の参加者は、各病院から推薦された看護婦を対象とし、看護部長、看護婦長、看護主任など指導的な役割を担っている看護師約600名分のデータを収集した。 この結果、看護必要度の項目のうち、「血圧測定」、「蘇生術の施行」・「点滴ライン3本以上」などの医療処置に関する項目に関しては、一致率も正答率も高く、平均8割以上を示していた。しかし、「寝返り」、「起上り」、「移乗」、「食事摂取」、「衣服着脱」といった日常生活動作への介助を評価する項目は、一致率も正答率も低く、とくに「寝返り」は、5割以下の正答率であった。また、年齢階層別の分析の結果、年齢階層が高くなるほど、評価テストの点数は低くなっていた。 これらの結果からは、看護必要度アセスメントに際しての基本的な問題点は、第1に、評価基準を理解していない。第2に、患者の状態をある動作をもとに推測してしまうことが多いことが明らかになった。 またアセスメントに際して、日常生活動作に関する項目は、毎日の記録をした経験がほとんどなく、同じ場面をみても看護師の臨床経験によって、アセスメントの選択肢が異なってしまうことが明らかにされた。 しかし、ビデオなどの実際の患者の映像を利用した評価を繰り返すことによって、8割以上の看護師は、アセスメントの正確さが増していくこともわかった。したがって、評価基準の理解のためには多くの患者を評価するという経験が必要であることがわかった。このため、評価基準の反復を行うことができるような学習システムを開発することがアセスメントの理解には不可欠であると考えられた。 また、判断が一致しにくい項目に関しては、判断を間違えやすい疑義問題をシステムの問題として含み、解説を加えることが必要であると考えられた。
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