医療費削減と定額支払制度の拡大に伴い、看護職員の人件費の根拠を明らかにすることが急務となっている。そのような根拠の1つとして、看護職員配置と有害事象の関係が注目されており、様々な有害事象の発生を多施設で効率的に検出する手法が必要とされている。これらの有害事象は、一般に自主的な報告制度によって収集されているが、この方法では多種多様な有害事象を収集することが困難である。 このような有害事象を電子カルテシステムから自動的に収集する手法を開発することが本研究の目的である。電子カルテの文字情報をコンピュータが自動的に処理するには、臨床で使われている用語を収録した用語体系(オントロジー)が必要である。しかし、既存の看護・医学用語集は、翻訳語が多く、収録されている用語数が少ない。 そこで、本研究では、臨床で使用されている表現の中で有害事象検出に必要となる用語を、クリティカルパス、処置伝票、温度板、標準看護計画などから収集した。収集にあたっては、茶筌(ChaSen) version 2.1 for Windows+IPADIC2.4辞書を用い、基本的な形態素に分割し、表示された結果から看護用語を1語ずつ登録した。その結果、標準看護計画データなどから複合語を含めて7162語の用語を抽出した。収集にあたっては、専門語とみなせる一般語(「現実問題」「おさまり」「音楽」)といった用語や、また、実際の電子カルテのデータから分析することを考慮し、誤字(「抹消温」正しくは「末梢温」、「眼検結膜」正しくは「眼瞼結膜」)も誤字として登録した。さらに、異表記情報(「癌」「がん」「ガン」)、類似情報(「サーボ」「人工呼吸器」「バルンカテーテル」「尿道留置カテーテル」)を行った。今後このようなオントロジーを用いて、実際の有害事象検出のための実証試験を行う必要がある。
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