研究概要 |
医療費削減と定額支払制度の拡大に伴い,看護職員の人件費の根拠を明らかにすることが急務となっている。そのような根拠の1つとして,看護職員配置と有害事象の関係が注目されており,様々な有害事象の発生を多施設で効率的に検出する手法が必要とされている。これらの有害事象は,一般に自主的な報告制度によって収集されているが,この方法では多種多様な有害事象を収集することが困難である。このような有害事象を電子カルテシステムから自動的に収集する手法を開発することが本研究の目的である。 電子カルテの文字情報をコンピュータが自動的に処理するには,臨床で使われている用語を収録した用語体系(オントロジー)が必要である。しかし,既存の看護・医学用語集は,翻訳語が多く,収録されている用語数が少ない。本研究では,平成18年度に臨床で使用されている表現の中で有害事象検出に必要となる用語を7162語収集した。平成19年度では,それらの抽出用語のオントロジーを作成するために,海外で作成されたICNP(Internationa ICIassificatiion for Nursing Practice看護実践国際分類)とのマッチングを行った。マッチングのために,用語のn-gramを文字長と出現頻度によって点数化するアルゴリズムをシステム化し,評価した。マッチングアルゴリズムの一致率は67%であったが,収集用語を同義語として追加することによって精度が改善することが示唆された。今後このようなオントロジーを用いて,実際の有害事象検出のための実証試験を行う必要がある。
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