昨年の報告から、さらにインタビューを重ねて、生体移植に関わる看護師が以下の体験をしていることが分かった。1.分かっていても踏み込めない:術前に移植患者やドナーの動揺に気づいても、「移植をやめる」や「臓器提供をやめる」と言われたくないとう思いから踏み込めないという体験をしている。肝移植領域の看護師は、ドナーが拒否することが、患者の死につながるために踏み込むことをためらう体験をしていた。腎移植領域の経験のある看護師は、ドナーに対してもう一度よく考えるよう促していた。 2.レシピエントを中心とした医療:術前・術後ともケアの必要度が高いレシピエントに対して集中し、ケアの負担に疲弊していた。また、「ドナーは健康体である」という思いこみから、ドナーへの関わりは二の次となり看護が行えていないという思いを双方の領域の看護師が同じような思いを抱いていた。 3.看護を行いながら感じるジレンマ:双方の領域の看護師が、移植医療は不確かな部分が多くあり、患者や家族に対して確信を持って対応できていないという思いがあった。また、肝移植領域の看護師は不幸な転機をたどる患者にどのように対応するべきか苦慮し、患者にとって「移植」という医療が適切であったのか疑問に思うこともあるということを経験していた。これらのことからドナーのケアリング・システムの構築には看護師の移植看護への知識や技術の向上に向けた取り組みも必要であることが明らかになった。 生体肝移植ドナー経験者の研究参加者の確保について、現在のところ困難さがみられているが、一定の成果が得られていると考える。今後、研究活動の見直し等を行い、さらなる成果が得られるように努力をしたい。 来年度は、新しい移植実施施設に対して、研究協力を依頼し、多くのデータを得られるように活動を行う予定である。
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