本研究の目的は、乳腺の発達・乳房の形態(サイズ)・新生児の哺乳状態・母乳分泌量との関連を明らかにし、より包括的なデータに基づいた個別的な母乳育児支援に役立てることである。 平成19年度の計画はデータ収集および分析、研究の総括であり、次のことが明らかになった。 対象は、正常な経過をたどっている妊婦21名(初産婦、1経産婦、2経産婦、各7名)であった。 妊娠期は4ヶ月、7か月、10か月、産褥期は0日〜4日までと1か月健診時に、乳腺組織の厚さを超音波診断装置にて測定した。同時に乳房のサイズを測定し、トップバストとアンダーバストの差を算出した。分析にはそれぞれ妊娠4ケ月の値からの変化率を用いた。母乳分泌量は、1日1回哺乳量(授乳前後の新生児の体重差)を測定した。 乳腺組織の厚さの変化率(乳腺変化率)を平均すると、妊娠10ヶ月までに28%増加し、産後0日は42%、産後4日は92%となり、産後1ケ月は78%となった。また、乳腺変化率は、全ての時期で、2経産婦がもっとも大きく、初産婦がもっとも小さかった。 乳腺の発達と乳房の形態について関係性をみると、全ての時期で、乳腺変化率と乳房サイズ変化率に有意な相関は認められなかった。 乳腺の発達と新生児の哺乳状態では、産後3日、4日の乳腺変化率と、産後1日の授乳回数に有意な正の相関が認められた。 乳腺の発達と母乳分泌量では、妊娠4ヶ月、および産後0日から産後1日にかけての乳腺変化率と、産後3日の母乳分泌量に有意な正の相関が認められた。また、妊娠4ヶ月、および産後0日から産後4日にかけての乳腺変化率と、産後4日の母乳分泌量にも有意な正の相関が認められた。 以上より、乳房の外観から乳腺組織の発達を判断することは難しく、乳腺組織の発達の測定は、個別的な母乳育児支援を行うために有用であると考えられた。
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