研究概要 |
本研究は,稀な先天異常児(発生頻度が10,000分の1以下)の健常な同胞の喜び・楽しさなどの想い,葛藤・苦悩などを明らかにし,遺伝診療現場に求められる家族アセスメントの内容を明らかにして,必要な看護アセスメントを提示することを目的としている.本年度の研究期間は,稀な先天異常児の両親が考える,同胞の心理・悩み・心配事,社会的な行動問題について面接調査をもとに分析を試みた.本申請で言う稀な先天異常とは,13トリソミー,18トリソミーなどの稀な染色体異常症や奇形症候群を指す. 対象となる疾患の自然歴に応じて,調査対象を区分した.まず,平均余命が乳幼児期といわれる染色体異常(13トリソミー,18トリソミー)群と,平均余命が比較的長い染色体異常・奇形症候群である.現時点で,両親が考えるきょうだいの以下のことが明らかになった.1)13トリソミーのきょうだい例では,児が生後約90日で死亡し,その時のきょうだいの年齢が1歳4か月だったため児の死亡の意味をよく理解していない.そのため,親はその事実をきょうだいに話す場合のタイミングを決めかねていた.時の死亡後,年齢が低いためにきょうだいの言動には変化が現れにくい特徴をもつ.2)幼児期以降のきょうだい例の場合.ダウン症候群児のきょうだい例で「軽症例」「重症例」ではきょうだいの意識が違うこと予想される.重度合併症をもつダウン症児の姉(10歳)は,めんどうをみる責任を感じている言動がみられ,軽症な合併症児のきょうだい(12歳)では,ダウン症児の養育に関する発言はみられなかった.このことから,心理的抑圧の違いが推察された. また,実際の遺伝診療現場で遭遇する看護記録の家系図の表記技術に統一性がなく,間違った記載に遭遇することが多かった.看護師の家系図表記技術の分析もあわせて行い,成果発表した.
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