本研究では在日外国人女性のうち、農村で日本人男性と国際結婚した外国人女性の妊娠・出産時に大きな影響を与える日本人家族との関係性について把握をめざすものである。そのなかで、これまでの調査で把握できた家族関係に関する問題が表面化する産後の時期の前、つまり妊娠期に、夫との関係性を良好とし、家庭内で相互理解の機会を習慣化しうるような家族関係の構築に向けた看護支援について検討することを目的とした。今年度は、「日本人配偶者」という特性の明確化をめざし、在留資格として「留学生の家族」に対象を絞り、妊娠の時期における家族関係構築に向けての看護支援について検討した。計6名の対象者に平均11回の面接調査を実施した結果、「日本人の配偶者」と比較し「留学生の家族」という在留資格における特徴として、「健診はほとんど毎回、夫婦で受診する」、「夫との関係性が主であり、すでに良い状態で構築されている」、「夫婦で話し合い、双方が納得して、様々なことを決定・選択している」、「慣習について、夫婦の考えに大きな差はない」、「同国人の支援者が周囲にいる」、「通訳サービスの支援が得やすい」、「経済的な問題を抱えやすい」、の7点が把握できた。またこのほか、現代の中国の母性看護の実情や家族の役割の違いについては、日本に比べ看護者の関わりの時間が絶対的に短く、夫や実母など家族が支援できる力を向上できるような関わりが重要であり、妊娠・出産する女性たちも家族にその面を期待していることが伺えた。これらのことより農村に嫁いだ外国人女性への家族関係構築に向けての支援策としては、義父母など日本人家族との良好な関係構築の前提となる夫との関係構築を最優先し、妊娠・出産にまつわる慣習の相互理解を促すためにも、話し合う材料の提供などを含め、可能な限り夫婦ともに妊婦健診を受診するよう働きかけることなど重要な示唆を得ることができた。
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