研究概要 |
脊髄損傷を負った高齢者の体験を記述し,体験者が自身の体験をどのように意味づけ,また,体験者にとっての希望とはどのようなものかを探求することを目的に,受傷後6ヶ月以上経過し,受傷時の年齢が60歳以上の脊髄損傷者を対象として半構成的面接インタビューを行った。今年度は,1名の協力者が得られ,昨年度の3名と合わせて4名の研究協力者について,各々の語りを逐語録にし,意味のまとまりを整理しながら個々のストーリを構成し,希望に焦点をあてた分析・解釈を行った。その結果,"受傷前の生活に近づく"という思いでさまざまな活動に精力的に取り組む協力者もいれば,"家族に負担をかけない""現状維持"という姿勢で今を過ごしている協力者もいた。後者のような態度は,筆者が以前に青年期や壮年期を対象に調査した結果には顕著に表れておらず,高齢者の特徴と思われた。しかし,障害への対処方法や身体的・精神的苦痛を乗り越える希望の核となるものは,個々で異なり,それらは体験者の性格特性や生活史と深く結びついていることが解った。このことから,脊髄損傷者の希望を支えるための方策として,看護者は体験者のライフストーリーに着目することが重要と考える。また,受傷から現在に至るプロセスの中で,希望を見出したり維持していくことに関係する要因として,身体的状況,リハビリの成果,自分の扱われ方,他患者の存在,自分の居場所,家族の存在が考えられた。これらの要因は,体験者の希望を見出したり維持していくことに,プラス要因にもマイナス要因にもなり得る。看護者は,各々にとってのプラス要因とマイナス要因を見極め,マイナスをプラスに転じるような関わりをしていくことが必要と思われる。今後は,結果の分析をさらに深め,学会報告および論文投稿を予定している。
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