本研究は、心疾患をもつ若年成人の生活変容決意の構造を明らかにすることである。療養生活の継続には、自分の意思で治療を選択し、生活を調整することが必要であるが、社会生活を営む若年成人にはいくつかの障碍が存在する本研究では若年成人の生活変容決意に関する心理社会的要因を調査し、要因間の関連を構造化することを目的とした。 1)質問紙による調査の継続実施と終了 平成19年度に引き続き質問紙を用いたフィールド調査を実施した。質問紙は、若年成人がいかに生活を調整していくのかという点に焦点をあてるため、就労によって生じる変数を投入し、生活調律、健康関連行動、就労環境を潜在変数とした因果関係モデル(パス図)を仮定し、それに基づき質問項目を作成した。調査方法として、同一対象者に2時点の定点を置いた縦断調査(パネル調査)を複数の施設で実施した。 2)調査結果の分析、モデル作成 調査結果を総合的に分析し、因果関係モデルを作成した。対象者は、従事している職業(産業種)に関しては、製造業が7名(16.7%)で最も多く、次いで運輸業(11.9%)、卸売・小売業(9.5%)、建設業(9.5%)であった。雇用状況は、半数が正社員だが、契約社員・派遣社員も少なくはなかった。現在国内の男性の全雇用者にしめる非正規労働者の比率は20%弱であり、今回の調査対象者における比率はさほど多くはなく、雇用は安定していた。雇用状況は、8割は復職しており、復職時期は、早くは数日以内で復帰しているが、平均すると2〜3週間ほどで戻っていた。最終的に2つの因果関係モデルを導いた。モデルは、観測変数として、「気づき」「セルフモニタリング」「自己調整努力」「健康関連行動」「働きがい」「労働負荷」「社会的資源」を投入。適合度指標は、CFI=0.994、RMSEA=0.029。モデルから「労働負荷」と「働きがい」との間には負の相関関係があり、「働きがい」は生活変容に負の影響があることが伺えた。
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