H19年度は、これまで実施してきた長期入院がん患児におけるClostridium difficile消化管保有と排泄ケアに関する調査結果をまとめ、学会発表および論文として投稿した(感染防止、2007。日本嫌気性菌感染症研究2007)。 検討したがん患児10名中8名の糞便検体からC. difficileが分離され、そのうち6名は、入院時にはC. difficileは分離されなかったが、入院経過中に培養陽性となった。このことから、抗菌薬や抗腫瘍剤使用中の小児がん患児において非常に高い割合でC. difficileが消化管内で増殖していることがわかった。8名中5名からtoxin A陽性toxin B陽性のC. difficileが分離された。そのうち2名はC. difficile関連下痢症/腸炎(C. difficile associated diarrhea: CDAD)を発症し、バンコマイシンによる治療が必要であった。小児がん患児において、CDADは稀な感染症ではないことが明らかとなった。8名から分離された9菌株においてPCR ribotypingによる解析を行った結果、2名から分離された2菌株は同一タイプであったが、残りの6名から分離された7菌株はそれぞれ異なるPCR ribotypeを示し、水平伝播の可能性が示唆されたが、性別や年齢、院内教室の通学の有無において、この2児間に共通の要因は明らかにできなかった。 これまでの結果より、小児がん患児において非常に高い割合でC. difficileが消化管内で増殖していること、水平伝播の可能性が示唆されたことなどから、次年度は、効果的な接触感染予防法を明らかにすることを目的に、患児のベッド周囲及び排泄物の処理経路を明らかにし、その環境側面のC. difficile検出状況を明らかにしていく予定である。
|