閉経後女性は、動脈硬化や心疾患の割合が増加すると言われており、これらは女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏によるものと考えられている。エストロゲン欠乏による諸症状に対して女性ホルモンの補充療法が行われてきたが、最近では、経口投与によるエストロゲンの補充により、中性脂肪値の上昇や、冠動脈疾患の発症を助長する小粒子化した低比重リポタンパク(LDL)が増加していることが報告されている。しかしこれらは経口投与量を半量にしたところ回避された。エストロゲンの血中濃度や、吸収・代謝経路の違いが、LDLの小粒子化に影響している可能性が示唆されている。 閉経前の女性においても内因性エストラジオール(E_2)値は大きく変動しており、月経周期をもつ女性は排卵期に、妊婦は妊娠週数に伴いE_2値は高値になる。LDLの小粒子化がE_2濃度依存的であるならば、月経周期や妊娠に伴うE_2濃度変動は脂質代謝に影響を及ぼす可能性が考えられる。また経口・経皮投与の代謝経路の違いに由来するのであれば、経皮投与および内因性E_2は経口投与と代謝経路が異なるため、月経周期や妊娠に伴うE_2濃度変動は、脂質代謝に影響を与えないと考えられる。そこで本研究は、妊娠後期や正常月経周期をもつ女性を対象に、内因性エストラジオールと血清リポタンパクの関係を明らかにすることを目的とし実施した。 本年度は、妊娠後期の20歳〜41歳の日本人女性30名を対象とし、研究への参加承諾を得て実施した。基礎情報を収集し、次に血清を用いてエストラジオール値と高感度CRP値、HPLC法によりリポタンパク質の解析を行った。現在、各測定結果の分析をすすめている。 今後は、正常月経周期をもつ女性を対象としてデータ収集・分析を行い、閉経前女性および閉経後女性入の保健指導介入や、より効果的なヘルスプロモーションの展開方法を検討していく。
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