本研究の目的は、母児分離を余儀なくされた母親に対する母乳育児支援の課題を明らかにすることである。そのためケアの受け手とケアの担い手の双方からデータを収集し、分析を行う。今年度は母児分離の状況にある母親を取り巻く看護職者(産科、Neonatal Intensive Care Unit ; NICU)が母児分離状態にある母親に行っているサポートに関する基礎データを得ることを目的とした。 研究方法は、F県内の施設基準を満たしたNICUの看護職員とそれらのNICUを有する病院の産科病棟看護職員を対象とした郵送による自記式質問紙調査である。質問紙は1989年にUNICEF(国連児童基金)/WHO(世界保健機関)が共同宣言として出した「母乳育児成功のための10カ条」(以下「10カ条」と記載)に基づき、産科とNICUの両看護職員がもつ「10カ条」の意識とその実践に関する項目から構成し、NICUと産科看護職員用の2種を作成した。なお、質問紙の返送を持って研究の同意を得た。 NICU看護職員は101名(回収率64.7%)、産科看護職員は50名(回収率48.1%)から回答を得た。職種の内訳は、NICU看護職員が看護師82名、助産師12名、その他7名、産科看護職員は助産師37名、看護師9名、その他4名であった。 「10カ条」に対して『内容を知っている』と回答した者は産科は40名(80%)であったのに対し、NICUは31名(30.7%)であった。『母乳の飲ませ方をその場で具体的に指導する』『母親に母乳の分泌維持の方法を教える』ことが《とても重要であると思う》と回答した者は産科、NICUを共に60%を超えたが、実際に母親に母乳分泌維持の方法を教えていたのは産科では39名(78%)、NICUでは49名(48.5%)であった。また、NICU看護スタッフは98名(97.0%)がNICUで直接母乳の観察・介助を行っていたが、自信を持って観察、介助していたのは19名(19.4%)のみであった。また、NICUと産科の連携に関して、『連携をとってはいるが充分ではない』と回答したのはNICU、産科ともに過半数を超えた。 これらより母児分離状態にある母親への母乳育児支援に対する意識と実際の看護ケアには差があることが示唆された。また、産科とNICUの連携もまだスタッフは不充分であると感じていることがわかった。
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