平成20年度はケアの受け手である母親から見た母乳育児支援の実際に関する基礎データを得ることを目的とし、質問紙調査を行った。またこれらの結果を元に母児分離を余儀なくされる環境にある母親(すなわち児がNICU ; Neonatal Intensive Care Unitに入院中の母親)向けのリーフレットを作成し、1施設で試験的に使用した。 調査期間は平成20年8月〜平成21年3月であり、調査方法はF県内の施設基準を満たしたNICU(1施設)に児が入院した経験を持つ母親を対象とした自記式質問紙調査である。質問紙は1989年にUNICEF(国連児童基金)/WHO(世界保健機関)が共同宣言として出した「母乳育児成功のための10カ条」(以下「10カ条」と記載)に基づき、母児分離状態にあった母親が実際に妊娠中からNICU退院までに産科・NICUスタッフから受けた母乳育児支援に関する項目から構成した。なお、質問紙の返送をもって研究の同意を得た。 回収率は28名(27.8%)であり、児の平均月齢は5.5か月(SD4.6)、児のNICU平均入院日数は40.3日(SD36.4)であった。 「母乳育児を行う上で一番役に立ったこと」は《入院していた施設の方針や入院していた施設のスタッフから習ったこと》が最も多く15名(55.6%)であった。「児がNICU入院中"子どもの状態に合わせて母乳育児を続けるために何を行えばよいのか"」について《その都度説明を受けた》と回答しだ者は20名(71.4%)であり、《その都度説明を受けていない》《わからない》と回答した者はそれぞれ4名(14.3%)であった。「NICU内で看護スタッフに実際に乳房や乳首を見てもらいたい(お乳や飲ませ方を見てほしい)」と《思ったことがある》と回答した者は10名(35.7%)であった。母乳育児に関してスタッフに自分の気持ちを尊重してもらい、精神的にサポートしてもらえたと《感じている》者は19(67.8%)であった。 これらより、母児分離状態にある母親への母乳育児継続には入院していた施設の方針やスタッフから教育を受けたことが影響を与えることが示唆された。母乳育児継続のための方法を教えてもらうだけでなく、実際にNICU内で乳房や乳首、飲ませ方を見てほしいと感じていることがわかった。それと共に精神的にサポートしてもらったと感じているものが少ないことがわかった。
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