近年日本の国際結婚は20年前と比べ激増している。総婚姻件数のうち約5%は国際結婚であり、特に夫日本人、妻外国人の組み合わせはそのうちの約8割にのぼる。結婚した女性たちは地域で出産し子育てをしながら生活を築いており、各地で確実に国際化が進んでいると考えられる。特に地方の農村地域では嫁不足によるアジア諸国からの移住も多く、異文化での慣れない生活に困難を感じている女性たちが潜在していると予想される。地方の農村地域では老齢人口が20%を超え、拡大家族による兼業農家が圧倒的に多く、農業や子育て、高齢者介護など多くの負担を女性が強いられている。さらに土着思考や家父長制が根強いため、外国人を受け入れにくい閉鎖的社会観が女性たちを孤独へと導いている。このような状況は、女性の生きていく力を奪いやすい状態にあると予測される。この女性たちが奪われた力を取り戻し、エンパワーメントしてゆくプロセスでの支援のあり方を探求する必要があると考える。 よって本研究では地方の農村部に嫁いだアジア出身の在日外国人女性を取り巻く実態と家族関係においてぶつかる様々な困難を明らかにするとともに実際に取ってきた対処方法を探る。さらにパワーレスに陥った女性が再びエネルギーを得るためにはどのような支援が必要であったのか、同じ経験をしている外国人女性たち同胞の支援の実態を明らかにし、この核となる女性の活動が、地域の健康保健にいかに貢献しているか明らかにすることを目的とする。 本年度は過去にインタビューした内容を丁寧に振り返るとともに、さらに文献検索を行い農村部で生活する在日外国人のおかれた実態を多面的に把握することに努めた。来年度はこれらを踏まえ女性たちが自らの力でエンパワーしていく経緯を数名の女性の語りをデータとして分析し在日外国人だけでなく現代の日本社会がもっている歪のなかで生じた女性を取り巻く問題の解決にも参考となる示唆を得たいと考えている。
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