思春期にある喘息児の療養に対するアドピアランスへの影響要因を検討することを目的とし、日本語版Asthma Compliance Instrument〔喘息の自己管理状況を表すコンプライアンス領域(13項目)と、自己管理への影響要因を表すコンプライアンス関連要因領域(10因子29項目)からなる質問紙〕、175名のデータでの共分散構造分析(有意水準0.05)を行った。 原版における概念モデルでは、1)「コンプライアンス」は「意欲」「ケアの成果」「普通という感覚」によって高められ、2)「家族や医療者の支援」「ケアの成果」「普通という感覚」は「意欲」「動機」の促進要因であると説明されるが、本分析においては、原版の概念モデルとは異なる構造モデルであった。すなわち、1)「支援」と「コンプライアンス」との関係においてパス係数0.8と、最も強い関係性が認められた、2)「支援」と「ケアの成果」との関係におけるパス係数0.7と強い関係性が認められ、そのうち「両親の支援」、「看護師の支援」と「ケアの成果」との関係はそれぞれ0.6、0.4であり、他者より肉親の支援のほうがより成果の実感につながっていると考えられた、3)「普通という感覚」と「意欲」との関係におけるパス係数は0.41と中程度の関係があり、普通でいられるという感覚をもてることが、療養への意欲に結びついていると考えられた、4)原版での概念モデルでは、「意欲」「動機」によって「コンプライアンス」が高められると説明されるが、本分析では関係性がみられず、長期的にセルフケアを実行しており、比較的セルフケアレベルが高い状況にある児にとって、常に意欲や動機づけを意識することなくセルフケアを行っていることがより自然なものであると考えられた。
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