研究概要 |
本研究の目的は,C型慢性肝炎患者のIFN療法に伴う抑うつ症状発症をプロスペクティブに評価し,かつ治療前予測因子(環境的要因,生物学的要因,性格特性など)との関連を明らかにすることで,インターフェロン療法を完遂・継続するための看護支援および,地域で生活しながら治療継続するためのシステムや周辺環境・資源などのサポートについて検討することである。 現在,ベースライン,治療開始後3・6ヶ月における調査を通年で実施している。現在までに調査が終了している,ベースラインデータから得られた結果は以下である。IFN投与前の本研究対象患者は,疾患に対する認識が十分あり,経済状態,仕事や付き合いなどの社会的背景は,日本人の標準的結果とほぼ同様であった。また,IFN投与前に重度抑うつ症状を有する患者はいなかったものの,IFN投与前の抑うつ症状とQOL低下が有意に関連しており,先行研究を支持する結果が得られた。すなわち,無自覚のままに進行するCHCであっても,IFN投与前に抑うつ症状を有する患者は,既に仕事や普段の付き合いなどに不自由さを感じている現状が明らかとなった。IFN投与中の抑うつ症状発症には,投与前の抑うつ症状のみならず,不眠傾向があることや疾患の転帰に強い不安を抱いていることなども挙げられている。更に,肝炎から肝硬変,肝がんに至ることが多いという情報の頒布などの要因も関与すると言われており,今後IFN投与開始後の追跡により検討したいと考えている。
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