本年度は平成19年度に実施した高齢者施設における感染症予防対策に関する調査の結果を分析し、論文としてまとめ、成果の発表を行った。 高齢者施設の感染予防対策では介護職員の手指衛生が重要であるが、感染予防対策や手指衛生に関する研究等は医療施設を対象としたものが多く、高齢者施設を対象としたものは少ない。しかし、施設の特徴を考えると高齢者施設の状況を把握し、施設の特徴に合わせた対策が必要である。 高齢者施設で働く介護職員の手洗いと手袋の着用に対する教育・知識・態度と施設の感染対策の関連について明らかにした。その結果、介護職員の手指衛生の実施率は34. 0%であった。手指衛生を促進する個人要因としては教育と態度の項目が、施設要因では手洗い環境と手洗い評価の実施に関連がみられた。 高齢者施設で働く介護職員の手指衛生実施率は医療従事者と同様に低く、手指衛生を向上させる取り組みが必要である。その方法としては、介護職員が手指衛生を実施しよう思えるよう態度へ働きかけ、教育には手洗いを評価する方法を取り入れ継続的に実施することが重要である。しかし、個人への働きかけだけでは不十分であり、介護職員が手指衛生を実施しやすい手洗い環境を整えることも重要である。なお、この内容については、論文としてまとめ現在投稿中である。 本研究では高齢者施設で働く介護職員の手指衛生に焦点を当てたところに意義がある。今回は調査票を用いた調査であり、今後この研究で明らかになった手指衛生を促進する要因を取り入れた介入を行い、手指衛生を促進する具体策を検討していく必要がある。
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